連載の2本目となる今回は感情がテーマです。本記事では、夫婦の間にある感情への向き合い方や扱い方をお伝えしていきます。夫婦問題のほとんどは感情的な問題に起因しています。ですが、学校や会社では「論理」や「正しさ」が重視されていることもあり、夫婦関係における感情の存在はあまり注目されていません。夫婦の間の感情について理解し、良好な夫婦関係を築く視点や素養を身につけることをゴールにおいて解説していきます。💡夫婦・カップルの仲良し度を気軽に診断!!夫婦の問題は感情によって引き起こされる夫婦問題を解決する際に切り離すことができないのが感情です。なぜなら一般的な仕事上のつながりとは異なり、夫婦関係は論理ではなく感情的に結びついている人間関係だからです。多くの夫婦問題は夫婦の間にある感情に起因するものです。ですが、多くの夫婦は目の前の夫婦問題を事務的に対処しがちです。その結果、夫婦の感情に目を向けたり満たしたりすることができず、問題をより深刻化させてしまいます。では、そもそも感情はどのように夫婦の問題を引き起こすのでしょうか。「感情的になるな」「感情を隠せ」という囚われ私たちがこれまで受けてきた教育や社会通念に一貫しているのは「大人が感情をあまり見せるものではない」というものではないでしょうか。学校では正解の導き方は教えてもらえても、自分の感情との向き合い方や扱い方を教えてもらえることはありません。そして、社会人になってからは「自立していること」「誰にも頼らないこと」が模範的な姿として評価されてきました。そのような教育や評価は裏を返すと「感情的になるのは甘えだ」「感情は隠せないのは子どもだ」という感情へのマイナスイメージを育てています。それにより、感情を「得体の知れないもの」「よく分からないもの」と捉え、向き合うことに苦手意識をもっている方も多いのではないでしょうか。しかし、前述の通り一般的に夫婦は感情によって結びつく人間関係です。感情の軽視は夫婦の結びつきを弱め、夫婦関係を悪化させてしまいます。まずは、多くの人に感情に対する苦手意識や回避傾向があることを理解し、感情に目を向けることの重要性を認識しましょう。感情は人類の生存本能の一部では、なぜ夫婦において感情が重要なのでしょうか。それは、感情が人類が生存するためのメカニズムであり、これまでの進化の過程の中で人間の本能として備わっているものだからです。感情の大きな役割の一つは、危機への反応と行動を促すことです。人類は外敵からの恐怖や不安を感じることで、思考するよりも早いスピードで筋肉や血流などの身体的な変化が現れます。その反応によって危機に対しての回避行動を即座にとることができ、自分や群れの身を守ることにつながりました。また、感情は群れを作ることにおいても役割を発揮します。人類はこれまで群れを作ることで身を守ってきましたが、群れをなす対象は誰でも良いわけではありません。打算的なつながりでは裏切られてしまうリスクもあるため、人類は信頼できる少数とのつながりを重視してきました。そこで、人類は他者とのつながりを構築・実感するために共感というメカニズムを開発しました。喜怒哀楽といった感情を共有し、そこに共感が生まれることによって仲間意識が芽生えて安心安全なつながりを築いていくのです。まとめると、人類は負の感情によって危機からの回避行動をとり、正の感情によって安心安全なつながりを生み出してきました。私たちが夫婦関係を築くことの土台には、自分たちの身を守るための安心安全なつながりへの欲求が生存本能として組み込まれているのです。ですので、夫婦関係の悪化は感情的な結びつきが弱まっていることを示し、そのまま安心安全への不安やストレスを生み出すのです。ほとんどの夫婦は感情的な飢餓状態にある感情的な結びつきは生存本能に組み込まれた欲求にも関わらず、多くの夫婦は自分やパートナーの感情へのケアは十分に行われていません。その結果、大半の夫婦が感情的な結びつきを得られない「感情的な飢餓状態(以下、感情的飢餓)」に陥っています。飢餓状態という強い言葉で表現をしましたが、文字通り飢えているのです。先述の通り、信頼できる他者とのつながりは人間が生存するためのメカニズムであり、それを実感できないことは生命にとって危機的な状態です。食事や睡眠をとることと同じくらい、感情的な結びつきは人間にとっての大切な栄養素なのです。ですので、夫婦問題の裏側には感情的飢餓が存在すると思っていただいてまず問題ありません。表面的には「ごみ捨てについて」や「物の置き場所について」といった些細な喧嘩・衝突に見えますが、その根元には「安心安全を感じさせてほしい」「もっと関わってほしい」「感情的に満たしてほしい」という感情的な結びつきへの欲求が訴えられていると考えたほうが良いでしょう。夫婦の関係修復のカギとなる愛着理論では、どんなことを意識して感情的飢餓と向き合うべきでしょうか。そこで大切になってくるキーワードが「愛着理論」という考え方です。愛着理論とは愛着理論とは、イギリスの児童精神科医ジョン・ボウルビィが20世紀半ばに提唱した理論です。子どもが不安を感じたときに、愛着のある特定の人物(主に両親)にくっついて安心感を得る不安解消のシステムを「アタッチメント(くっつく)」と定義しました。そして、アタッチメントを通して「心のつながり」を獲得することが子どもの心身の発達において重要であると唱えました。子どもは好奇心が旺盛で、日々新たな行動や挑戦をします。ですが、時には失敗をしたり不安になることがあります。そのとき、両親へのアタッチメントによって安心することができ、また新たな行動や挑戦をしていきます。アタッチメントの具体的な例としては、「身体に触れること」「抱きしめられること」「なぐさめてもらうこと」といったことが挙げられます。心理的・身体的にくっつくことで安心を得ることができるのです。大人にもアタッチメントが必要ここで大切なのは、アタッチメントは子どもにとってだけでなく、大人にとっても重要であるという点です。かつてはアタッチメントというのは子どもの発達に対しては重要なものであって、大人には必要がないものと考えられていました。ところが多くの研究で、アタッチメントの対象は変われどその必要性や欲求は大人にも存在することが分かっています。大人であっても、不安なときには以下のような欲求が生まれるものです。人にくっつきたい、触れられたいと思うこと寂しいときに、寄り添って欲しいと思うこと悩んでいるときに、話を聴いてほしいと思うことそんな欲求が本来あるにも関わらず、私たちは「自立すべき」「依存するな」という過度な教育や社会通念によってそれらを否定します。特に競争社会で生きてきた方は上記のような考えを否定する傾向にあります。もちろん仕事上そうならざるを得ない部分もあります。ですがアタッチメントの重要性を否定し、感情的な結びつきを軽視することは夫婦関係においては有害でしかありません。愛着理論を念頭に感情に向き合う感情的な結びつきの重要性はこれまで解説をしてきたとおりですが、それらを構築するためにアタッチメントが非常に大切なキーワードになります。以下のことを念頭におき、夫婦関係の修復を進めていきましょう。まず、結婚した時点で夫婦はお互いにとって特別な存在である、つまり愛着関係であることを理解しましょう。普段は夫婦喧嘩が絶えなかったり会話がなかったりと、特別な存在には思えないかもしれません。ですが、大切な存在でなければそもそも結婚はしていないですし、些細なことでイライラしたり夫婦関係がうまくいかずに思い悩むのもパートナーへの愛着や特別感があるからです。そして、衝突や対立があった際には「その奥にはどんな感情が潜んでいるんだろう?」と感情に目を向けることを習慣化しましょう。私たちは自分の感情や欲求のことを正しく知ることはなかなかできていません。自分の感情も分からないのに、パートナーの感情なんて分かるはずないですよね。日々の生活の中でイライラや不安などが生まれたとき、少し立ち止まって出来事のいきさつや自分やパートナーの感情・欲求を書き出してみることをおすすめします。夫婦での衝突の発生や感情が動いた際に、以下について書き出すことを習慣化しましょう。夫婦の間にどんな出来事がありましたか?夫婦でどんな言動がありましたか?あなたはその出来事でどんな感情を抱きましたか?パートナーはどんな感情を抱いたと推測しますか?(不安?怒り?寂しさ?恥ずかしさ?情けなさ?)その出来事の裏側で、あなたにはどんな欲求がありましたか?パートナーにはどんな欲求があったと推測しますか?(共感?寄り添い?励まし?理解?応援?安心?)夫婦の感情的な結びつきを示す要素感情的な結びつきが本当に築けているかどうかは、目に見えないことなのでなかなか分かりません。そこで、健全な夫婦に現れる3つの要素について解説をします。まずは自分たち夫婦の現在地を知ることが大切ですので、以下の要素が夫婦の間に現れているかをチェックしてみてください。①距離:安心して心を開くことができていますか?距離とは、夫婦の間での心理的な距離や心の近さを表す要素です。パートナーに対して安心して心を開くことができるかどうかが夫婦関係の健全性を示します。感情的な結びつきが強い夫婦は心理的な距離が近い傾向にあります。パートナーに対してオープンさを保つことができ、悩みや弱みを見せることも容易にできます。また、心の距離が近いほど、見つめ合う・じゃれ合うといった身体的な距離も近い傾向にあります。一方、感情的な結びつきが弱い夫婦は心理的な距離が遠い傾向にあります。パートナーへの警戒心・恐怖心を抱いており、何かを相談したり弱みや悩みを共有することが難しくなっていると言えます。②反応:共感・共鳴を示すことができていますか?反応とは、パートナーの発した信号への共感・共鳴を表す要素です。パートナーの存在や発言を受け止め、反応や思いやりを返すことができるかどうかが夫婦関係の健全性を示します。感情的な結び付きが強い夫婦はパートナーの信号への共感・共鳴が強い傾向にあります。パートナーの存在や発言に対して興味・好奇心を持ち、慰めや思いやりの信号を返すことが容易にできます。距離と反応は強く連動しており、距離が近いほど反応も強い傾向にあります。一方、感情的な結び付きが弱い夫婦はパートナーへの共感・共鳴に曇りがかっている傾向にあります。パートナーへの感情に対しての関心・注意が薄れており、パートナーが求める反応や思いやりの声掛けをすることに抵抗を感じていると言えます。③関与:手を差し伸べることができていますか?関与とは、夫婦の間での手助けや支え合いをできることを表す要素です。パートナーを大切な存在と認めており、具体的な手を差し伸べることができるかどうかが夫婦関係の健全性を示します。感情的な結び付きが強い夫婦はパートナーへの積極的な関与が生まれやすい傾向にあります。パートナーの求めに応じて、あるいは必要とする助けを予測して手を差し伸べることが容易にできます。また、関与の度合いが夫婦でバランスをとれているかも大切な要素です。一方、感情的な結び付きが弱い夫婦はパートナーへの関与が消極的、あるいはアンバランスな傾向にあります。パートナーへの貢献心や思いやりが薄れており、積極的にパートナーを支えていく、パートナーへの重要性が揺らいでいると言えるでしょう。夫婦円満度チェッカーで手軽に診断これらの要素を自分たちでチェックするのは簡単ではありません。そこで、灯し屋では夫婦関係をスコアで測る『夫婦円満度チェッカー』を開発しました。これまでに100名以上が診断をしているデータをもとに、客観的な数値で夫婦関係を評価します。夫婦の現在地を正しく理解したうえで取り組んでいくことが大切ですので、ぜひお気軽に診断をしてみてください。『夫婦円満度チェッカー』で診断してみる ↗まとめ本記事では夫婦の間の感情についての解説をさせていただきました。夫婦の間にある感情や愛着に目を向ける機会はこれまであまりなかったのではないかと思います。夫婦が長期的に良好な関係を築くためにはとても大切な要素です。基礎知識として、これからの夫婦関係構築の念頭に置いていただけると幸いです。