連載の3本目となる今回は、いよいよ具体的な関係修復の手法を取り上げていきます。本記事では夫婦喧嘩のパターンを把握し、対処する方法をお伝えしていきます。多くの夫婦はお互いへの警戒心が高まっており、そもそも関係修復のプロセスを進めることが難しい場合がほとんどです。ですので、まずは現在の夫婦喧嘩のペースを緩めて話し合いや前向きな取り組みができる状態を目指すことをゴールに置いて解説していきます。💡夫婦・カップルの仲良し度を気軽に診断!!夫婦喧嘩はふたりがハマる落とし穴以前の記事で「感情的な飢え(感情的飢餓)によって夫婦問題が生まれている」と解説をしました。感情的な結びつきが得られていないことは、安心安全が担保されていない死活問題であるということは前記事でも解説したとおりです。前回の記事の内容を前提に、夫婦喧嘩に対しての向き合い方を解説していきます。前回の記事を参照する ↗感情的飢餓によるパニック状態夫婦喧嘩の背景には、感情的なパニック状態があります。感情的な結びつきへの欲求は、安心安全を実現するために人類の脳に組み込まれています。そのため、つながりの喪失感や孤立への不安感を感じると、人間はパニック状態に陥ってしまいます。パニック状態に陥ると、パートナーとの感情的な結びつきを取り戻そうと躍起になって過剰な行動を生み出します。感情的な結びつきは人類にとって食事や睡眠と同じぐらい大切な栄養素だと捉えると分かりやすいです。食事や睡眠が十分にとれていないとき、人は自分の意思を越えてそれらを最優先で求めます。それと同様、感情的に満たされていないとき、私たちはパニック状態となって感情的な欲求を満たそうと感情な行動に出るのです。それを反応行動と言います。夫婦喧嘩を緩めるためには、その背景にあるのは感情的飢餓を由来としたパニック状態なのだと考えておくとよいでしょう。どんなささいな衝突や事務的な問題にも、裏側では「あなたは私の支えになってくれるか?」「私はあなたにとって大切な存在か?」が問われているのです。不安によって生まれる2種類の反応行動感情的飢餓を解消するために、私たちは情緒的飢餓を解消するために大きく2種類の反応行動を示します。そして、それらが引き金となって夫婦喧嘩を引き起こします。ひとつは「攻撃的な反応行動」、もうひとつは「防衛的な反応行動」です。「攻撃的な反応行動」は、感情的な結びつきを取り戻そうとする積極的な行動です。例えば、パートナーからの慰めや安心感を引き出そうとしてうるさくまとわりついたり、自己主張することでパートナーの反応を得ようとするのです。その本音にあるのは「こっちをみてほしい。そばにいて欲しい。助けてほしい。」というメッセージです。それでも求める反応が得られない場合、相手への強い叱責や人格の否定といった攻撃的な行動が強くなっていきます。「防衛的な反応行動」は、自分の中の感情を落ち着かせようとする消極的な行動です。例えば、自分の心や自尊心を守るために相手と距離おいたり、パートナーの話に耳を貸さないようにするのです。その本音にあるのは「傷つけられたくない。取り乱してはだめだ。恥ずかしい、情けない、怖い。」というメッセージです。それでも安全が得られない場合、パートナーの話や存在さえも無視を決め込むといった防衛的な行動が強くなっていきます。どの反応行動をとるかは普段のコミュニケーションやこれまでに培った愛着関係によって左右されます。また、必ずしも攻撃的な衝突ばかりではなく、防衛的な夫婦同士では明確な衝突が発生しにくいケースもあります。それでも、不安感や緊張状態がある限り、それらも夫婦喧嘩のパターンであると捉えておきましょう。夫婦で落とし穴にハマっているここでポイントなのは、お互いの反応行動がお互いの反応行動を強めることで夫婦喧嘩がより深刻になっているという点です。ある夫婦では、どちらかが攻撃的になることで他方が防衛的になり、その防衛的な姿に不安が駆り立てられてさらに攻撃的になるといった悪循環を生んでいました。夫婦喧嘩にはきっかけがあっても原因はありません。どの夫婦も「落とし穴」にふたりでハマっているのです。夫婦喧嘩の落とし穴から抜け出すには、ふたりで協力して抜け出すほかありません。夫婦喧嘩に対処するには、まずは自分たち夫婦がどんなパターンが定着しているのかに気づくことから始まります。どんな落とし穴に落ちやすいのかを理解しておきましょう。そして、落とし穴に落ちないように普段から足元を警戒し、もし落とし穴に落ちたときにもすぐに抜け出せるように準備をしておくことが大切です。夫婦喧嘩の3つのパターンでは、夫婦喧嘩にはどんなパターンがあるのでしょうか。夫婦喧嘩には大きく3パターンがあり、どれかが中心的になることもあれば、状況によって現れるパターンが変化することもあります。以下の3パターンの中で、夫婦がどの落とし穴にはまることが多いのかを考えてみましょう。1.正面衝突:攻撃×攻撃「正面衝突」は攻撃的な反応行動の組み合わせによって起こります。自分の欲求や不安の感情を裏に隠し、相手への主張や非難をぶつけ合っているような状態です。お互いに「相手が悪い」「自分が正しい」という立場に立ち、自分の正しさや相手の間違いをと主張するために過去の出来事を蒸し返します。このパターンが定着すると常に相手の攻撃に警戒するようになり、先制攻撃や反撃を厭わなくなります。時には思ってもいないことを口にしてしまい、冷静になったときに後悔や自責の念に駆られることもあるでしょう。正面衝突のパターンでは、言い争いを続ける限りお互いが得るものは何もないということに気付き、認め合うことから関係修復の一歩が始まります。たとえ相手を打ち負かすことができたとしても、お互いに残るのは心の傷や無力感だけです。そこには勝者はおらず、ふたりともが敗者なのです。2.抗議活動:攻撃×防衛「抗議活動」は攻撃と防衛の反応行動の組み合わせによって起こります。どちらかが欲求や不安の感情を満たそうと攻撃的になることで、他方は防衛的になって身を隠そうとします。すると攻撃側がさらなる不安や失望を感じ、ますます攻撃的になることでさらなる防衛行動が生まれてしまいます。このパターンが定着すると、攻撃→防御→攻撃→防御…と際限のない負の悪循環に陥ってしまい、心の距離がどんどん離れてしまいます。この状態が悪化すると、最終的には次に紹介する「冷戦状態」にまで陥ってしまいます。抗議活動のパターンでは、自分の攻撃・防衛が夫婦にとって有害であるということを理解することが大切です。一見、防衛側は冷静で正しいようにも見えることもありますが、夫婦関係ではパートナーへの侮辱や失望を引き出します。また、実は過度な防衛本能が働いており、過去の体験からくる恐れや恐怖心を克服する必要があるかもしれません。3.冷戦状態:防衛×防衛「冷戦状態」は防衛的な反応行動の組み合わせによって起こります。上記のような言葉の弾丸が飛んでいない状態ですので、一見すると平和な夫婦関係であるようにも見えます。ですが、多くの場合は「正面衝突」や「抗議活動」の末に終着した、失望感や無力感に溢れた関係性であることが多いです。このパターンが定着すると、お互いに感情的な結びつきへの欲求や不安を心から締め出そうとします。そして、なるべく感情的な動きや変化が生まれないように細心の注意を払いながら生活をすることになります。ですが、感情を押し込めようという取り組みはうまくはいきませんので、心の中では多くの葛藤をお互いに感じています。「冷戦状態」が定着化している場合、このまま放置することが非常に危険であると自覚することが大切です。そして、感情的な結びつきへの欲求はあらゆる人に存在することを自覚し、自分にもパートナーにも感情的な欲求があるということに向き合っていくことが必要になります。夫婦喧嘩の悪いパターンから抜け出す方法では、夫婦の落とし穴に対してどのように対処していくべきでしょうか。以下では、夫婦現下の悪いパターンから抜け出す方法を4ステップで解説していきます。ステップ1-3は自分だけでできる内容になっており、夫婦のどちらかが自覚するだけでも効果があるものです。ワークも用意しているので、ノートを用意してひとりで取り組むとよいでしょう。ステップ4はパートナーも巻き込む内容になっています。もし可能であれば、パートナーとも取り組んでみてください。夫婦で協力して夫婦の落とし穴に立ち向かうことができれば、今後の関係修復はより進みやすくなるでしょう。ステップ①:どのパターンにハマっているかを自覚するまずは自分たち夫婦がどのような落とし穴にハマっているのか、ハマりやすいのかを観察することからスタートしましょう。「正面衝突」「抗議活動」「冷戦状態」の3つのパターンを解説しましたが、その中でどの落とし穴に落ちることが多いでしょうか。過去を振り返ればすぐに結論が出るかもしれませんし、すぐには特定できないこともあるかもしれません。すぐに結論は出なくても問題ないので、まずは意識的に自分たち夫婦のパターンを知ろうと日々観察をしてみましょう。以下について書き出してみて、どのパターンにハマっているかを考えてみましょう。「正面衝突」「抗議活動」「冷戦状態」のうち、どのパターンに陥ることが多いでしょうか?夫婦の反応行動を整理しましょう。夫婦はそれぞれ攻撃・防衛のどちらの反応行動を示すことが多いですか?そのパターンは以前から継続していますか?それとも変化を経て今のパターンが定着しましたか?ステップ②:パターンにハマった印象的な出来事を振り返る続いて、具体的なエピソードをより深く振り返っていきます。最近、夫婦の間で特に印象的だったことを思い出してみてください。「冷戦状態」のように明確な衝突がない場合もありますが、怒りが湧いた出来事や感情がかき乱された出来事などの心がゾワゾワするような出来事を挙げていただくのが良いでしょう。一度だけでなく、夫婦が落とし穴にハマったと感じた際には毎回振り返りをするのがおすすめです。以下について書き出してみて、夫婦の落とし穴にハマったときのことを振り返りましょう。どのような流れでパターンにハマった?時系列でのお互いの言動を整理してみましょう。夫婦喧嘩に火がついたのは、どんなタイミングや言動でしたでしょうか?その出来事でふたりはどんな気持ちになった?まずは当時の自分の気持ちを振り返ってみましょう。夫婦喧嘩の中で、あなたはどんなことを感じていましたか?パートナーはどんなことを感じていたと思いますか?そのパターンによってふたりはどんな被害を受けた?夫婦の落とし穴によって、自分やパートナーにはどんな悪影響がありましたか?無力感や徒労感でしょうか。それとも、心の傷や心の距離が生まれたのでしょうか。ステップ③:そのパターンに名前をつけて警戒するここまでのステップに取り組めば、夫婦喧嘩のパターンが少しずつ見えてきたのではないでしょうか。そこで、今後も同様のことが起きないように、そして起きたときの対応について考えておくことが大切です。すぐに落とし穴を回避することは難しいですが、何度も繰り返す中で少しずつ「あ、悪いパターンに入っているかも」と気づくことができるようになっていきます。以下について書き出して、夫婦の悪いパターンに落ちないように警戒しましょう。そのパターンに名前をつけるとしたら?まずはそのパターンに名前をつけてみましょう。「正面衝突」「抗議活動」「冷戦状態」といった言葉に囚われずとも、好きな映画やアニメなどから適切なワードを引っ張ってきていただいて構いません。普段から警戒できるように、覚えやすい名前をつけてみましょう。もし同じ落とし穴にハマりそうになったときはどうする?落とし穴が近づいてきた場合やハマってしまった場合、どうしたら抜け出せそうでしょうか。「この状況ってふたりにとってあまり良くないよね」「私たち、いつも同じパターンにハマってるね」など、パートナーに何かを伝えても良いかもしれません。「一度落ち着いてからまた話そう」とその場から離れても良いかもしれません。ステップ④:パートナーにも切り出してみるここまでは自分の中だけでの振り返りでした。ここまででも十分に意義のあることではありますが、やはり夫婦で共通認識を持てていることは非常に強力な武器になります。これまで書き出したことをもとをパートナーにも伝え、これまでの3ステップについて夫婦で話し合いをすることはできますか?話を切り出す際には、明確に2つのメッセージを示すことが大切です。夫婦関係をより良くしたい(向上・修復)したいと考えていること夫婦で協力してそこに立ち向かっていきたいということこれまでの負の積み重ねがある場合、あなたの切り出しに対してパートナーは反発するかもしれません。その奥には感情的な結びつきへの不安があることを忘れず、辛抱強くパートナーを安心してもらう必要があります。また、いきなりパートナーに切り出すことに抵抗がある場合、まずはこちらの記事をシェアして読んでもらうだけでも効果があります。第三者の解説により共通認識を持つことで、夫婦での取り組みが受け入れられやすくなります。ステップを繰り返しながら夫婦喧嘩のスピードを緩めるここまでのステップは、夫婦がハマりやすい落とし穴を特定し、どんな流れで落とし穴にハマり、どのように落とし穴を警戒するかを明確にするプロセスでした。これらを個人もしくは夫婦で取り組むことは、落とし穴の回避や脱出をする手助けしてくれます。ただし、このワークに取り組んだところでいきなり夫婦喧嘩が減るものではありません。落とし穴にハマっている状態では、周りのことはよく見えないものです。何度もふりかえりを継続し、落とし穴への警戒を習慣化することで、だんだんと落とし穴に気づきやすくなっていきます。そうすると、夫婦喧嘩のペースが少しずつ緩み、話し合いや取り組みができる状態が少しずつできていきます。最初はうまくいかなくても当然なので、落とし穴にハマってもめげずに取り組んでいきましょう。まとめ本記事では夫婦喧嘩のパターンを把握し、対処する方法を解説しました。まずは夫婦喧嘩のパターンを知り、警戒することでペースを緩めることが大切です。忘れてはいけないのが、そのパターンの奥底にあるのは感情的な結びつきを得たいという欲求があるということ。それを念頭に、夫婦喧嘩の裏で「お互いに本当は何を伝えたいのか?」を探求していきましょう。