連載の5本目となる今回は、「夫婦喧嘩の振り返り」をテーマとして取り上げます。本記事では、日々の夫婦喧嘩や不和をふりかえり、夫婦の結びつきを取り戻していく手順をお伝えしていきます。ここまでの記事を読んで実行してくださった方は、これまでのプロセスを通して夫婦の結びつきを取り戻す準備が整ってきているはずです。それを土台として、夫婦で日々の出来事を振り返りながら夫婦の結びつきを強くしていく手法を学ぶことをゴールに置いて解説していきます。💡夫婦・カップルの仲良し度を気軽に診断!!夫婦の結びつきを強める振り返りの力これまで夫婦喧嘩について学び、感情との向き合い方を学び、自分の心のかさぶたと向き合ってきました。ここまでのプロセスでも、夫婦の雰囲気はガラッと変わったのではないでしょうか。ですが、感情的な結びつきを深く強めるためには習慣的な努力が必要になります。頭で分かっても、すぐには改善はできないもの前回の記事で解説をさせていただいた「心のかさぶた」はとても力強いものです。実際の傷口が擦られるとすごく痛むように、心のかさぶたが刺激されると強い不安や心の痛みが襲います。そして、思ってもいないような発言や行動を取ってしまうものです。たとえこれまでの記事を熟読し、内容を深く理解していたとしても同様です。頭や思考で冷静な対処がし難いからこそ、夫婦関係は簡単ではありません。ですので、ここまで読んでくださっている方も、夫婦生活では「つい嫌なことを言ってしまった」「よくない自分が出てしまった」と思われることが今後もあるでしょう。ですが、心配することはありません。夫婦喧嘩や夫婦問題が起きたとしても、今のみなさんであればそれらを夫婦の結びつきを強めるきっかけにできる能力の土台を手に入れています。ここまでの記事を読まれているだけでもすごい努力ですし、目に見えづらいかもしれませんが少しずつ改善をしているはずです。ご自身を信じて、焦らずにゆっくりと改善をしていきましょう。夫婦での振り返りが感情的な結びつきを強める今回学んでいただきたいのは「夫婦喧嘩の振り返り」です。振り返りの力はとてもパワフルです。振り返りを習慣化することで過去の経験から学び、そしてその学びを活かすことで未来をより良い方向に変えることができます。仕事やキャリア形成の面での振り返りを個人で習慣化されている方もいらっしゃるのではないでしょうか。それと同様、夫婦で振り返りをすることも非常に有益です。振り返りが行われない場合、夫婦喧嘩や夫婦問題はただお互いにエネルギーを消耗させるものにとどまってしまいます。ひどくエネルギーを使う割に、そこ残るのは情けなさや徒労感ばかりです。夫婦の間での衝突や不和が今後も起きることを前提に、それらを機会と捉えて振り返りを習慣化するようにしましょう。夫婦で難しければ、お一人でも構いません。振り返りを行うことで、夫婦喧嘩は改善の材料となります。そして振り返りを習慣化することで、夫婦の感情的な結びつきを徐々に取り戻すことにつながります。夫婦喧嘩を振り返る手順それでは、夫婦喧嘩を振り返る具体的な手順を解説していきます。ステップ1.夫婦喧嘩の落とし穴に気づいて戦いを止めるまずは夫婦喧嘩の落とし穴に気づいて夫婦喧嘩を止めることが先決です。以前の記事でも解説をした通り、夫婦喧嘩というのは落とし穴であり、悪いパターンにふたりでハマってしまっているのです。その事実になるべく早く気づき、どちらかからでも夫婦喧嘩を止めるきっかけを作ることが大切です。夫婦喧嘩を止めるきっかけとして、主語を「わたし」「あなた」ではなく「わたしたち」に切り替えて語りかけることは有効です。「わたしたち、今よくない状況じゃない?」「わたしたち、また落とし穴にハマってない?」とどちらかが勇気をもって切り出すことができると、戦いを止めることにつながるでしょう。また、ときには時間や距離をいったん置き、冷静になってからまた振り返りをすることも有効です。その際はなるべく感情的にはならず、「お互いが傷つくだけだから、頭を冷やしてから落ち着いて話し合いをしよう」と声をかけるのがよいでしょう。ヒートアップしている状態では振り返りは難しいので、落ち着いて話せるタイミングを選ぶのは大切です。夫婦喧嘩をスムーズに止めるためにも、夫婦喧嘩のパターンについてお互いが理解をして起きましょう。ですので、夫婦喧嘩について解説をした以前の記事をパートナーにも読んでもらえると、お互いに戦いを止めるきっかけを作りやすくなりますよ。ステップ2.夫婦喧嘩の流れを振り返る一度戦いの手を止めることができれば、夫婦喧嘩のスピードを緩めて冷静に振り返りがしやすくなります。まずは、夫婦喧嘩に至るまでの流れやその結果についてふたりで思い出してみることが大切です。きっかけとなったのは誰のどんな言動でしたか?その言動にはどんな背景がありましたか?その言動に対して相手はどんな反応でしたか?その言動にはどんな背景がありましたか?その後、どんな流れを経てふたりは落とし穴にハマりましたか?その結果、ふたりはどんな状態になってしまいましたか?ここで大切なのは、相手への非難や自身の正しさを主張することは避けることです。どんなきっかけ・発言・行動によってふたりが落とし穴にハマったのかを、ただ事実として整理するだけにしましょう。夫婦喧嘩でどちらか一方が絶対的に悪いということはありません。そして、この場で非難や主張をすることは明らかに"悪"であることを心してください。ステップ3.お互いの気持ちを共有する夫婦喧嘩の流れを振り返ると、徐々に自身の感情的な部分にも目を向けることができるようになっていきます。夫婦喧嘩の流れの中でどんな気持ち(怒り、悲しみ、恥ずかしさ、恐れなど)を感じていたのかを話しあってみましょう。自分の感情を認めて開示することは、パートナーへの歩み寄りを示すことにつながります。夫婦喧嘩の一連の流れの中で、あなたはどんな気持ち・感情でしたか?特にあなたの感情を煽ったのはどんな言動でしたか?その言動から、あなたはどんなメッセージを受け取りましたか?何を言われたと解釈しますか?もしも自分の中で認めたくない気持ちや明かすのが怖い感情がある場合、「私の中に〇〇な部分があった」というような言い回しは有効です。自分が認めたくないネガティブな側面を表現する際、曖昧にでも認めることが可能となります。ステップ4.お互いの「心のかさぶた」とその影響を認識する感情の背景にある心のかさぶたを改めて理解をし合いましょう。以前の記事で取り組んだ心のかさぶたについての共有を何度も行い、そしてお互いに再確認をすることが大切です。特に以下についてをお互いに確認しましょう。心のかさぶたは、どんな欲求が生み出すものですか?心のかさぶたが痛むとき、どんな感情が生じますか?心のかさぶたが生まれた背景を思い出すことはできますか?多くの場合、以前の記事で解説した愛着に対しての不安や欲求からくるものが大きいでしょう。お互いの大切な部分を理解しているという事実は、夫婦の結びつきを強めることにつながります。また、心のかさぶたを癒やすことにもつながるでしょう。加えて、自分という存在やその言動が、相手の心のかさぶたに強く影響をするということも理解しておきましょう。冷静であれば相手の感情や気持ちに寄り添うこともできるでしょうが、夫婦喧嘩の間にあっては相手のことを配慮することも困難になります。自分のどんな言動が相手の感情や心のかさぶたをかき乱すのかを理解しておくことが大切です。ステップ5.お互いにポジティブな宣言で終えるここまでを夫婦で振り返ることができると、お互いを敵とみなす必要はなくなります。夫婦で落とし穴にハマっていたことやその背景にある感情や欲求を理解し、お互いに何を求めていたのかを理解することができています。振り返りの締めとして、今回の夫婦喧嘩や振り返りの内容を通して何を学んだのか、そして今後どのように取り組んでいくのかを宣言して振り返りを終えましょう。その際、お互いに「してほしいこと」や「してほしくないこと」といった願いを伝えられると、取り組むべきことがより明確になって良いでしょう。また、謝罪や感謝を言葉にできると良いでしょう。これはどちらからでも構いませんが、今この記事を呼んでいるあなたから歩み寄るべきです。「あんな発言をして申し訳なかった」「振り返りができて嬉しかった」「本音を聞かせてくれてありがとう」。そういった言葉の積み重ねが、夫婦関係の修復や信頼関係づくりにつながります。夫婦喧嘩を振り返る注意点上記の手順を習慣化することができると、夫婦喧嘩はエネルギーを消耗するものではなく、夫婦の進歩を促す価値あるものになっていきます。とはいえ、振り返りはそんなに簡単なことではありません。以下の点に注意をして、振り返りを習慣化してみてください。事務的な問題と感情的な問題を切り離す本当に関係が悪い夫婦の場合、些細な事務的な問題(旅行の行き先、子どもとの関わり方、スーパーで買うもの等)がきっかけとなって夫婦喧嘩や不和が発生することがあります。その際、よく「感情的な問題を切り離し、事務的な問題のみに取り組もう」というアイデアも見られます。ですが、これはなかなかうまくいきません。なぜなら、事務的な問題の裏側には感情的な問題が根強く結びついているからです。事務的な問題をきっかけに、根元にある感情的な問題が表出しているのです。そこで事務的な問題を優先して解決しようとしても、問題をこじらせるだけで解決はおろか問題をさらに深刻にさせるだけです。ですので、事務的な問題は脇に置いておき、その裏側にある感情的な問題の解決を優先する方がうまくいくことが多いです。感情に目を向け寄り添うことによって、事務的な問題の解決自体もよりスムーズにいくことが多くなります。どうしたら主張を通せるかよりも、何が感情的に満たされていないのかに目を向けていきましょう。事実よりも認識に目を向ける夫婦喧嘩を振り返る際につい「どちらが正しいか」を明らかにしたくなる気持ちも湧き上がるでしょう。一般的な振り返りの際には、事実を冷静に分析して正解を判断することが求められます。ですが、夫婦の振り返りにおいては事実を追求し過ぎることは必ずしも良いことではありません。もちろん、まずは事実として夫婦喧嘩がどのような流れで起こってしまったのかを振り返ることは最初の手順です。ですが、同じ出来事を経験しても夫婦が認識していることはまったく異なるものです。それらを否定するのではなく、お互いが「どう認識しているのか」に向き合うことが大切です。その出来事に対してお互いが「どう認識したのか」「なぜそう認識したのか」を明らかにしましょう。その上で、どんな点に認識のズレがあるのか、それらが生まれないために「どうすべきだったか」「どうしないべきだったか」を話し合っていきましょう。相手が話し終えるのを最後まで待つ最後の注意点は話し方や伝え方についてです。多くの場合、夫婦は長年の関わりを通してコミュニケーションのスタイルが固定化しています。多くの夫婦はそれぞれに「攻撃的」か「防衛的」なコミュニケーションスタイルをとっています。そこで気をつけなければいけないのは、お互いの話をすべて出し切れるように配慮することです。関係性が悪くコミュニケーションが上手くいっていない場合、相手の発言に対して話し終える前に否定してしまったり、何を言ったら良いか悩む相手を急かしてしまうようなことが見られます。そうすると、お互いにますます攻撃的・防衛的になってしまい、話し合いをすることはできません。ですので、攻撃的なスタイルの人は相手が話し終えるのを待つということを、防衛的なスタイルの人は自分の意見や主張を意識的にすることを心がけなければいけません。それが難しい場合には、①お互いに5分ずつなど話す時間を固定し相手は口を挟まないこと、②事前に話したいことについて準備をしておくことなどをルールにしておくとよいでしょう。まとめ本記事では夫婦喧嘩の振り返りの方法を解説しました。夫婦での振り返りを習慣化することができれば、少しずつでも夫婦関係の改善や安心・安全な結びつきを強めることにつながっていきます。一度取り組むだけではなかなか成果が出ないかもしれません。新しいことをすることで、逆に不安定になってしまうこともあるでしょう。ですが、地道に取り組むことで効果は出ますので、すぐに諦めるずに何度も挑戦をして夫婦関係の修復を目指していきましょう。